看護師の役割
入所者の病気と身体的特徴
歳をとっていけば、健康上の様々な問題も重なり、病気を患っていたり、治療を受けていたりする人が多くなっていきます。介護保険施設ももちろん例外ではありません。
療養型病床や介護老人保健施設には、日本の三大死因の1つである脳血管障がいの後遺症で、寝たきりや半身麻痺、嚥下困難、会話ができないなどで、日常生活に支障をきたした人がたくさん入院しています。
さらに糖尿病や高血圧症、ガンなどの手術の人など、いろいろな病気を抱えています。
また、認知症を患った人も急増しています。認知症患者数は2025年には323万人になると推計されており、認知症に対する知識とケアの充実が今後の課題となっています。
どんな医療ニーズがあるのか
いちばん多い「服薬管理」は、全部の施設のおよそ7~8割を占めています。内服薬や点眼薬も含めた薬の管理のことで、看護師は定期的に処方される薬を入所者1人ひとりに対して日付別、時間別(朝、昼、晩、就寝前)に分け、その時間帯に配り、薬を飲みこむ確認まで行います。
介護療養型医療施設に多い「胃ろう栄養法」は、その是非が問われている医療処置なので、聞いたことがある人も多いかもしれません。
「吸引」とは、たんの吸引のことです。健康な人であれば、たんが絡めば自分で出すことができます。しかし肺の病気があったり、高齢であればあるほど、なかなかたんを外に出せません。とくに寝たきりの人の場合、全身の機能が低下しているためたんが溜まりやすく、頻繁に管を使って吸引しなければなりません。もしもたんが肺や気管に溜まってしまうと肺炎を起こし、命に危険が及ぶ可能性もあります。
病院と介護保険施設における看護師の業務の違い
病院や診療所における看護師の注目される業務といえば、点滴の管理や注射、決まった時間の検温や治療の説明などでしょうか。
では、治療がメインではない介護保険施設での看護師の業務にはどのようなものがあるのでしょうか。
それは「日常生活の中の看護」です。
具体的には「健康管理」と「医療処置」があります。
医療知識が備わっている看護師は、入所者の身体面・精神面から問題点を総合的に判断し、介護士などのスタッフと協力して最適な援助をしていかなければなりません。
生活の場における看護師の仕事
介護保険施設で共通するおもな看護業務には以下のようなものがあります。
健康管理
入所時に本人や家族から健康状態を聞き、ケアプランに沿った看護計画を立案し実践していきます。
日常生活動作の援助
病気やケガなどで更衣や清潔保持、食事摂取などに障がいがある人に対し、現状の動きを実践していきます。
医師の回診サポート
とくに常勤の医師がいない場合、的確に入所者の体調や問題を医師に伝え、指示を受け実施していきます。
家族のサポート
家族背景や家族の希望を把握し、日常生活や看取り時のアドバイスや精神面のフォローをしていきます。
介護士との連携
看護師よりも介護士のほうが入所者との接する時間が長いので、いろいろなことに気づくことも多いです。
報告・連絡・相談を徹底し、異常の早期発見のためにも看護師は専門的知識をもとに介護スタッフと連携を図っていきます。
介護保険施設での看護師の具体的な仕事
検温
・体温、血圧、脈拍測定
・呼吸状態の確認(呼吸数、聴診器で肺を聴診)
・便、尿の状態の確認(回数、症状、お腹の張りなど)
・痛みや訴えの有無の確認
・むくみ、皮膚の色、関節の動きの確認
・意識レベルの確認 など
服薬管理
・入所者ごとに薬を朝、昼、夜、寝る前で分ける(配役カートのセッティング)
・薬を配る
・内服確認(飲み込みまで)
・とくに便秘や高血圧の薬は、検温のデータと照らし合わせて、適切かどうか確認し、必要があれば医師に報告
急変時の対応
・救急車を呼ぶか否かの判i断
・呼吸、血圧などのバイタルサイン測定
・入所者の希望に沿った医療処置(気道確保、心臓マッサージなど)
・医師への報告、指示受け
医師とのコンタクト
・入所者の状態報告
・食事摂取量や便や尿の具合、意識レベルなどを報告し、指示を受ける
・回診の介助
・歯科や眼科など、外部の医療機関受診の指示受け
・処方箋の確認
日常生活動作の援助
・麻痺や痛みの程度を把握し、苦痛がないように援助する
・今ある運動機能を最大限に生かせるよう援助する
家族のサポート
・家族を安心して預けられるように、適切な病状や看護の説明を随時、行う
・介護保険や福祉制度についての説明
・意向を聞き、フィードバックする
勉強会の実施、指導
・カンファレンスを実施する
・介護士向けに看取りや体についての勉強会を開催する
このように看護師のおもな業務は「健康管理」と「医療処置」です。
高齢化にともない、医療処置を受ける入所者が増えています。
医療ニーズの増加によって介護保険施設における看護師の必要性は今後ますます高まっていくでしょう。